5月の初旬、舞鶴市を流れる伊佐津川水域で環境DNAの調査を行いました。伊佐津川はもともと現在の流路ではなく、別の場所を流れていました。1580年代、西舞鶴に位置していた田辺城を築造する際に、「瀬替え」と呼ばれる大土木事業により、川を曲げ、現在の形になったそうです。これにより、城下町への浸水を防ぎ、堀としての機能も持たせたそうです。今に続く、人々と水域の関わり合いを感じられますね。さて、環境DNAとは、水や土壌、空気中に含まれる微量なDNAのことです。水を汲みどのようなDNAが入っていたかを調べることで、そこにどのような生物が生息しているかを調べることができます。環境DNAを見ることで、野外で観察されたデータと比較したり、野外観察では発見できなかった生き物がいたかどうかも判別することができます。今回は、環境DNAを調査した後、実際に川に潜って生き物観察しました。川での調査風景。怪しい人ではありません。↑ヨシノボリのなかま(カワヨシノボリ?)。ハゼ科に分類されます。腹びれが吸盤のようになっており、「葦にも登る」ことからこの名前が付きましたが、実際には葦には登らないようです。↑ムギツク。体長は15cmくらいですが、コイのなかまです。石を突いてエサを捕食する時に「麦を突く(脱穀する)ような音がする」ため、この名前が付いたようです。実はこの魚は、大きな石の下面や割れ目にも卵を産み付けますが、オヤニラミやドンコという魚が産み付けた卵のそばに、便乗して卵を産み付ける魚でもあります。これは托卵とよばれ、卵の世話はオヤニラミやドンコに任せてしまいます。面白い生態を持っていますね。その他にも、ドジョウのなかまや、トンボのヤゴ、カエル、スジエビのなかまなど、様々な生き物が見られました。今後は、川を分断する堰が魚類の往来にどのような影響を与えるのか調べていく予定です。里海につながる川の生態を理解することもまた、大事なことだと改めて感じた一日でした。