9月14日、上賀茂試験地では、里山おーぷんらぼ(第16回)を実施しました。6月の「里山おーぷんらぼ」で畑に植えられたコブナグサが育ち、6月~8月にかけて摘み取って乾燥させたマリーゴールドの花とともに、十分な量を用意できました。おーぷんらぼでは、それらの材料に加えて、樹木の葉などを媒染剤として用いて、布を「染める」体験をしながら、植物やそこから生まれる色を観察しました。芦生研究林で活動されている京都芸術大学の豊島淑子さんを中心にご指導いただきました。未就学児・小学生、大学生・大学院生、社会人など合計26名が参加しました。京都大学フィールド科学教育研究センターから、徳地教授、田中特定研究員、大橋技術職員、西岡技術職員、企画情報室の中村技術職員が参加しました。コブナグサは、6月のおーぷんらぼで、美山からの苗を植えたものです。畑の一角で、比較的よく育ってきたコブナグサの葉(写真)、マリーゴールドの花、タデアイの葉を採集しました。事務所棟に戻ったのち、コブナグサから、きれいな葉をより分けました。選別したコブナグサをネットに入れて、鍋に投入。徐々に色がしみ出しています。コブナグサ、マリーゴールドの黄色、タデアイの青色と色を比べる目的でスオウの染料を用いました。スオウとは、インド・中国・東南アジアで生産されるマメ科ジャケツイバラ亜科の小高木で、日本にも飛鳥時代から輸入されていた植物です。染料として樹木の心材が用いられています。水に投入した直後から、赤色がしみ出て、その色の強さ・鮮やかさに驚かされました。ロケットストーブで加熱すると、色がさらに出てきました。その後、あらかじめ水に浸した絹布を浸して、染めていきました。マリーゴールドの乾燥させた花と生の花から色を出していきました。煮だした色の比較。左から、コブナグサ、スオウ、マリーゴールドです。媒染剤の効果を比べるさらに、媒染液による効果を比較しました(写真左)。写真右の上左から、Cu(銅線+酢)、ヤブツバキ、Al(ミョウバン)、下左から、クロバイ、Fe(鉄くぎ+酢)を並べています。写真の上列がコブナグサ、下列がスオウにより染めた絹布。縦列の左から、ヤブツバキ、Cu(銅線+酢)、クロバイ、Al(ミョウバン)、Fe(鉄くぎ+酢)を媒染液として加えたもの。タデアイの生葉染め収穫したタデアイ(青色)の生葉をミキサーで砕いて、コブナグサ(黄色)で染めた布の上から染めると、色が重なって緑色が現れました。型染め午後には、さらに発展した取組として、草木染で染められた生地の上に「型染め」をおこないました。豊島先生が持参された型を用いて、参加者が「型染め」の工程に挑戦しました。【付録】上賀茂試験地の樹木から作る媒染剤上賀茂試験地の樹木を用いた媒染剤(木灰の上澄み)を以下の方法で作成しました。クロバイ、ヤブツバキの葉枝を刈り取り(9月5日)、6日後に焼き、木灰を作りました(9月11日)。右下写真の左がヤブツバキ、右がクロバイの灰です。その灰に湯を注ぎ(写真左)、翌日まで置いて、上澄みを取れるよう沈殿させました(写真中)。写真右は、その結果得たクロバイ木灰の1番目の上澄み液です。上澄み液はペーパーフィルターで濾しています。上澄みを取り出した後の灰に湯を入れると、翌日2番目の上澄み液をさらに得ることができます。今回のおーぷんらぼでは、1番目の上澄み液を用いました。【事前準備】今回の取組は、豊島先生を中心に、京都芸術大学・繁田先生にもご助言いただいて、全体工程についての計画や材料の調達をおこないました。(9月5日)草木染関連グッズを取り扱う店にて、材料の調達。上賀茂試験地において現地設備を確認しながら、当日の流れを検討しました。里山エリア等において、媒染剤の材料となるクロバイ・ヤブツバキを採取しました。(豊島氏、繁田氏、田中)(9月11日)クロバイ・ヤブツバキの媒染剤をつくるため、先日採取した2種の葉枝を燃やし、灰を作成しました。灰をぬるま湯に浸し、その上澄み液を9月14日に用いました(田中)(9月13日)型染めのための顔料を調達。草木染するために用いる道具類を上賀茂試験地に持ち込みました。(豊島氏、田中)【参考資料】青木 正明(2019)「天然染料の科学 (おもしろサイエンス) 」,日刊工業新聞社.