「新しい里山里海の勉強会(第7回)」を7/3(水)に開催しました。第一部では、東京大学 先端科学技術研究センター・教授の森章先生から「知床国立公園での自然再生の取り組み」についてご講演いただきました。当日は多数の方にご参加いただき、誠にありがとうございました。(当日の様子は京大フィールド研HPのレポートをご覧ください。)講演後、QandAでご質問をいただきました。時間の関係でお答えできなかった分について、森先生からご回答いただきましたので、ご紹介します。(森先生ありがとうございました!)Q.防鹿柵の効果について 防鹿柵がある場所で、生物多様性の低下をきたしたという結果でしたが、どのような項目が予想に反していたかということと、どのような項目が生物多様性の低下に大きく寄与したという結果だったのか概要をもう少し教えていただきたいです。A. 回答 (講演の)最後でもお話ししましたが、今回の結果は林床植生に関することで、樹木は種によっては防鹿柵の中でしか見られないものもいます。必ずしも 防鹿柵が負の効果を持つということではなく、もちろん植生回復や種の保護にも役立っています。ただ、場合によっては、一部の種を促進して、それらが多種を抑圧や排除することも起こり得るということです。知床の場合、前者はツタウルシだったりします。そして、シカの積極的な密度調整の効果もあり、シカによる過剰な植圧は一定のピークを過ぎたのではということで、これ以上防鹿柵を新規作成しない、リソースを他のことに移すという方針になった次第です。そのため、森林再生地であるにも関わらず、むしろアカエゾマツ植林地で伐採を進めていたりもします。徐々に森林再生のフェーズが変わってきている状況で、これまでの成果の精査や今後の方針策定のために、森林再生専門委員会議があります。Q. 科学的知見の地域への伝え方 ご講演の中で、シカの存在について、地域やステークホルダーの方にお話するところで、伝えにくい結果だったと思うのだが、それをどううまく説明されたのか? 雰囲気とか、伝え方について、教えてください。そのあたりが、自然科学の実験や社会科学の研究をする上で、かなり大切になってくると思っています。A. 回答 このご質問ですが、シカに限らず、極論に行かずに、色々なステークホルダーの意見、現地の実情を鑑みて、丁寧に説明や議論を重ねるに尽きると思います。時間をかけて、現地の方々との関係性を築いてきましたし、アカデミックな視点や科学的エビデンスとはまた異なる実情も鑑みて、コミュニケーションを取っています。あとは、エビデンスになるデータを、私たちの研究室が資金から人的なリソースまですべて提供して取っていることも大きいと思います。私たち自身が手を動かしている、研究資金もトラスト運動の寄付金の中ではなく、研究室として独自に確保していることなども関係していると思います。以上になります。たくさんのご質問ありがとうございました。次回の勉強会は12月を予定しています。