新しい里山・里海共創プロジェクトでは、里山里海団体の現場に訪問して、お話を聞いたり参加して、里山里海で活動するヒントを学ばせていただいております。7月、京都大学大学院地球環境学堂・深町研究室にてプロジェクトについてお話した際、深町先生ご自身も深く関わる「やぶこぎ探検隊」の里山での活動にお誘いいただきました。やぶこぎ探検隊の活動に参加 8月5日朝、JR蓬莱駅から斜面を上り、道から少し離れた活動サイト「夢の森」に集合しました。「やぶこぎ探検隊」のフィールド「夢の森」は、滋賀県・湖西地域の比良山麓、大津市八屋戸の守山地区に位置しています。この日、やぶこぎ探検隊からおとなとこども12名の方々、京大フィールド研から舘野教授、伊藤特任助教と特定研究員の田中が参加しました。森での虫捕りに参加した後、古民家を活用した拠点、団体の畑、そして薪材を搬出する里山の林を見学させていただきました。(森の虫捕り) この日の活動メニューは「森の虫捕り」。事前に、ピットフォールトラップによる昆虫採取について情報をお伝えしたところ、やぶこぎ探検隊メンバーが、前日に30箇所ほど紙コップを埋められていました。まずは、その仕掛けたトラップをみんなで見て回りました。 トラップではアトボシアオゴミムシ(もしくは、キボシアオゴミムシ)、ルリセンチコガネなどが確認されました。見つけた昆虫を、こどもたちが持参した虫かごに入れて観察しました。 トラップの観察が一段落した後、地上の昆虫を探しながら森を散策。発酵したような樹液の香り漂う樹木を一撃するとミヤマクワガタ、コクワガタが樹冠から落ちてきました。そのほか、ニホントカゲ、ササキリ、アオカナブン、スジアオゴミムシ、ヤスデ、ザトウムシ、アリジゴクも観察しました。(山から下りて民家と畑を訪問) 深町先生が里山活動の拠点としている集落内の古民家をご案内いただきました。かまど、風呂などの暮らしの設備を今でも利用できるそうです。かつて、里山から薪や石を運んでいた荷車など生活で使用した道具が展示されています。守山は守山石という京都の庭園などで利用される貴重な石が採れる地域で、琵琶湖・疎水を通じて、京都市内へ運ばれていたそうです。民家の玄関前にはその貴重な石材が地面に敷かれています。この民家を使って大学のフィールドワークもおこなわれているそうです。 古民家横の住宅では、山から流れる水を軒先の「かわと」へ導かれていて、今でも使用されています。この集落から、さらに湖側へ下ると、やぶこぎ探検隊の耕す畑があります。(里山の森での作業) 昼食後、守山地区より北部に移動した花こう岩地帯に広がる里山林にて、薪材を運び出すお手伝いをしました。 軽トラックが駐車できる道から50mほど入った森で、チェーンソーによる材の切り出し、一輪車での運び出し等の作業を大人5人とこども1人で手分けしておこないました。約30分で、軽トラ一杯分(400kg程度)の薪材が集まりました。家まで運んで、薪割り・乾燥をおこなって、薪ストーブやかまどなどで利用することができます。厳しい暑さの中、森からの運び出しを体験して、大変さをあらためて実感しました。(活動について) 1950年以前61戸であった守山地区は、2016年には228戸になったそうで、多くの世帯が地域外から移り住まれています。やぶこぎ探検隊は、こうした外から移り住んだ方々が中心になって、1997年から活動をはじめられたそうです。 前年度の最後に、次年度の企画を相談し、毎月1回程度の活動が計画されます。森や民家の所有者など地元に古くから住む方々の協力を得ながら、グループの主要なメンバーで運営されています。薪炭林と畑での活動を26年間継続されています。 ウェブサイトはこちら→ やぶこぎ探検隊森里海の関わる地域のスポット(木桶の工房) 里山の活動の見学の合間に「中川木工芸 比良工房」にお邪魔しました。京都白川で営まれていた先代の木桶工房から独立して、2003年に比良に工房を開かれたそうです。以前、シャンパンクーラー用の木の葉型の木桶を見たことがとても興味があったのですが、それを製作されたのが、まさにこちらの工房でした。木桶の製作や若い職人の指導などの他、京都の御室・仁和寺裏山の森でのワークショップなどもなさっています。 ウェブサイトはこちら→ 中川木工芸 比良工房 (小さな水族館) 最後は、「小さな水族館びわこベース」に訪問しました。こちらは2022年7月にオープンした、まだ新しい施設です。自然写真家である関慎太郎さんが立ち上げられました。 毎週金土日・祝に開館されています。日本各地の淡水生物を常時100種以上展示し、繁殖技術の確立、生息環境を失った生物を一時的に預かる場としても利用されています。 ウェブサイトはこちら→ 小さな水族館 びわこベース 上の写真はびわこベースの外観です。訪問したときは、入場者のほか、ワークショップの企画について学生や外部専門家の方が活発に議論していました。関さんから施設についてご紹介いただきました。