2024年1月23日に行われた第5回 新しい里山里海の勉強会に関して、神田先生へいくつか質問がきておりました。神田先生から、質問に対してご回答いただきましたので掲載いたします。神田先生、お忙しい中ありがとうございました。Q. 長く取り組みを続ける中で、どのようなときに幸せを感じますか? サマースクールや体験学習などを行っている際に見せる子供達の好奇心に満ちた瞳や笑顔を見るとやりがいや幸せを感じます。またアオリイカの産卵床を設置した後、おびただしい数のアオリイカが集まり産卵している様子を見ると幸せを感じますね。Q. 担い手不足が進行する中で、機械が担える部分はありますか?また、地元漁師などにはそういった機械の導入への抵抗感はありますか? 担い手不足を補うための機械の導入について、地元漁師の抵抗はそれほどないとは思いますが、機械購入の余裕はあまりないと考えます。Q. 活動を継続するには資金や人材が問題となりますが、どう解消していきますか?高齢化問題への対処法はありますか? 人材を確保するにしても資金が必要です。地域の課題解決に取り組んでいても、公共性の高い活動であればあるほど、それは行政がやればいいとか、NPOがボランティアでしたらいいなどと他人事として捉えられがちです。かといって地元行政が環境保全や環境教育、課題解決といったこれまで仕事として捉えていないものに予算をつけることもありません。様々なアイデアやしっかりとしたスキルを持った専門家集団としてのNPOは課題解決能力があるのに、それをボランティアベースでしか考えていない。それでは地域課題解決をしようとする専門家は育たない。行政が自分たちでできないことは仕事として予算化すべきだと声を大にして言いたい。私たちは自分たちの活動を維持するために、収益事業を行いながら、一方で課題解決にも注力している。それゆえ仕事量は2倍だが収入は半分。そういった環境下に置かれた状態では、後継者としての若い人を雇いNPOを維持していくことは極めて困難です。 地域が高齢化していくと地域コミュニティを維持していくことが極めて困難になるだけでなく、子供も孫もここにはいないので自分の代で終わりと、将来への希望が持てずに地域住民のモチベーションも下がっていく。そんな中では若い人も育ちにくく、人が多い都会へ流出してしまい、集落を維持していくのはさらに困難になる。若い力、情熱をもった人を応援するような行政の施策が求められると思います。その新たな担い手がIターン者だと思います。地元のルールやしきたりを知らずに移住してくる彼らを、排除するのではなくこれから共に生活していく仲間として、優しく受け入れていくことが高齢化社会を迎える地方において今後必要なことだと思います。Q. コモンズがわかりやすい形で現れているのは里海だと思いますがいかがでしょうか?(例えば台湾の漁村はみんながたむろできる場所。生産の場所であり、コミュニケーションの場所でもある)。 その通りだと思います。地先の海は多くの方が利用する共有地であるがゆえに、色々な摩擦も生じやすくルールが必要です。昔から地元の人たちだけで利用してきた場合には暗黙の了解や、コミュニティが密接な関係にあるので調整しやすかったのですが、近年外部から海を利用し生業とする人や、レジャーで楽しむ人が増えてきたので、誰もが納得でき理解しやすいルールの明文化も必要になってきたと思います。いろんなコンフリクトが生じてもコミュニケーションをとることが解決に向かう方法だと思います。最終的に落ち着くとみんながたむろできる里海になるのだと思います。Q. 高校生が考えたプロジェクトで里海づくりを目指しており、アマモを育てようとしています。しかしのり業者と競合しております。コンフリクトの解消の重要なポイントはありますか? 昨今、アマモが里海のシンボル的になり、全国各地でアマモ場作りが広がっていますが、なぜアマモである必要があるのかということを、これまで生業として行ってきたのり業者の方と話し合いをする必要があると思います。のりが駄目でアマモがいいというわけではありません。アマモが増えるとのりに不純物として混じって取り除く作業が負担となるのだと思います。両者が相手の立場に立って考えることで、何らかの妥協点が見つかると思いますが、生活がかかっている人を説得するにはかなりの時間と労力が必要となります。 生態系全般のことを考えた時に、どこで折り合いをつけるかという事が試されると思います。単にアマモを育てるだけでなく、自分たちがいいことをしていると思っているのになぜ反対するのかといったことを考えることで、高校生たちの学びにつながると思います。Q. 里山の保全活動をしております。いつも決まった参加者は来てくださるが、新規の参加者が増えず、少しずつ参加者が減っていくことに課題を感じていますが、対処法はありますか? 里山や里海の保全活動などは打ち上げ花火的なイベントで成り立つものではなく、継続していかねばなりませんし、継続することに意義があると思います。ただ、メンバーが固定化し次第次第に減少していくことはよく理解できます。このように考えてみたらどうでしょう?自分が里山の保全などにはあまり関心がないとしたら、何があれば参加してみようと思えるのか?里山保全が大事だと感じ参加している方は、なぜ減少していくのでしょうか? 一つは、活動のマンネリ化、参加者が固定化されていることに対してある種の敷居の高さを感じる人がいるのでは?里山保全をしなければという義務感が少しずつ重く感じてきているなど様々な要因があると思います。基本がボランティア活動であるならば、最初は思いが強いので参加するのですが、楽しくないと続かないのがボランティアです。里山保全の活動を100%フルでやることから、少し遊びや楽しめる要素も入れることで、保全達成の効率は落ちても長く多くの方が参加して続けることも重要なことではないでしょうか?私たちのアオリイカを増やす取り組みもいろんなフェーズやマイナーチェンジを入れながら24年目を迎えます。子供達の学習としてやる際にも、ただ木を沈めるのではなく、海のことを学ぶのに山のことも学習する中で森林組合の人に協力してもらい間伐体験をしたり、その後は森の栄養を作っている土壌動物の観察をしたり、イカがどんな産卵床にたくさん卵を産むか自分たちで木を選んだり、マイ産卵床のどの部分に産むか考えて、そこに目印をつけることを入れたり、その後イカへのメッセージプレートを付けるなどのマイナーチェンジを行なってきました。それから少しずつ内容を深化させ卵の飼育と観察、イカの身体の作りを学ぶ解剖、イカ拓作り。最後は食べるところまで。子供達だけでなくやっている私たちも飽きない仕組みが長続きさせる秘訣です。Q. 柴漬けという方法は全国各地でやっているのですか?千葉でもやっていたら見てみたいです。 千葉でも柴漬けを行なっているようです。https://www.pref.chiba.lg.jp/gyoshigen/shingikai/saibai-shigen/kekka/documents/p48-51siryou.pdf